インプラントは虫歯にならない?寿命を左右する手入れ法とリスク解説

東京都大森駅徒歩50秒の歯医者・歯科「おおもり北口歯科」です。
「インプラントは虫歯にならないと聞いたけれど、本当だろうか?」「せっかく高い費用を払ってインプラントにするなら、できるだけ長持ちさせたい」そのような疑問や期待をお持ちではないでしょうか。
結論からお伝えすると、インプラント自体は虫歯になることはありません。しかし、だからといってメンテナンスが不要なわけではありません。むしろ、手入れを怠ってしまうと虫歯よりも深刻な「インプラント周囲炎」という病気を引き起こし、最悪の場合、インプラントが抜け落ちてしまうリスクがあります。
この記事では、インプラントが虫歯にならない科学的な理由から、インプラントの寿命を縮める主なリスク、そしてそれらを防ぎ、インプラントを長持ちさせるための日々の正しいお手入れ方法や歯科医院での定期メンテナンスの重要性について詳しく解説します。この記事をお読みいただくことで、インプラントを安心して長く使い続けるための具体的な方法と知識を身につけ、失った歯の機能を取り戻し、より豊かな生活を送るための第一歩を踏み出せるでしょう。
結論:インプラント自体は虫歯にならない
「インプラントは虫歯になりますか?」というご質問に対し、結論からお伝えすると、インプラント自体が虫歯になることはありません。これは、インプラントが人工物でできているためです。天然の歯は、虫歯菌が作り出す酸によって溶かされるエナメル質という組織で覆われていますが、インプラントにはこのエナメル質が存在しません。
インプラントは、主にチタンという金属や、セラミックなどの歯科用素材で作られています。これらの素材は、虫歯菌がどんなに活動しても酸によって溶かされることがないため、虫歯とは無縁と言えます。この点においては、天然歯と比べて大きなメリットがあると言えるでしょう。
しかし、虫歯にはならないからといって、インプラントがメンテナンスフリーというわけではありません。手入れを怠ると、虫歯よりも進行が早く、より深刻なトラブルにつながる可能性があります。次のセクションでは、インプラントが虫歯にならない理由をさらに詳しく解説し、その後に潜むリスクについてもお話しします。
なぜインプラントは虫歯にならない?天然歯との構造の違い
インプラントが虫歯にならないのは、その材質が人工物であることと、天然歯とは根本的に異なる構造を持っているためです。天然歯が持つ生物学的な構造が、虫歯に対する耐性を決定づける一方で、インプラントはその人工的な特性によって虫歯のリスクから解放されています。ここでは、その構造的な違いについて詳しく見ていきましょう。
インプラントが虫歯にならない理由
インプラントは、主に「インプラント体(人工歯根)」「アバットメント(連結部分)」「上部構造(人工歯)」という3つのパーツで構成されています。インプラント体は、顎の骨に埋め込まれる部分で、生体親和性の高いチタンが使われています。このチタンは金属なので、当然ながら虫歯菌に侵されることはありません。
上部構造、つまり人工の歯の部分は、多くの場合、セラミックやジルコニアといった、見た目も美しく耐久性のある歯科用素材で作られています。これらの素材も、天然歯のような神経や血管、象牙質などの有機質を含んでいません。そのため、虫歯菌が酸を作り出して表面を溶かすという虫歯のメカニズムが、そもそも当てはまらないのです。人工材料であるため、細菌の活動による影響を受けることは一切ありません。
天然歯とインプラントの構造的な違い
天然歯は、歯茎の上に見える「歯冠」と、歯茎の中に埋まっている「歯根」から成り立っています。歯根の周りには「歯根膜」というクッションのような組織があり、噛む力を和らげたり、細菌感染から骨を守ったりする重要な役割を担っています。
一方、インプラントは、顎の骨に直接チタン製の「インプラント体(人工歯根)」を埋め込みます。その上部に「アバットメント」という連結部分を介して、最終的な「上部構造(人工歯)」を装着します。このインプラントには、天然歯にある歯根膜や神経、血管が存在しません。歯根膜がないことで、インプラントは噛む力を直接骨に伝えることができ、安定性に優れています。
しかし、この構造的な違いが、インプラントが虫歯にならない理由であると同時に、後に解説する「インプラント周囲炎」という、天然歯の歯周病よりも厄介な病気のリスクにつながることも理解しておく必要があります。
虫歯より怖い?インプラントの寿命を縮める主なリスク
インプラントは人工物であるため、虫歯になることはありませんが、決してメンテナンスフリーの治療ではありません。適切なケアを怠ると、虫歯以上に深刻なトラブルを引き起こし、インプラントの寿命を大きく縮めてしまう可能性があります。
このセクションでは、「インプラントは虫歯にならないから安心」という誤解を解消し、長期的にインプラントを良好な状態で維持するために、特に注意すべき主なリスクについて詳しく解説します。主に「インプラント周囲炎」「周囲の天然歯のトラブル」「インプラント本体の破損」「噛み合わせの問題」の4つのリスクが存在し、それぞれがインプラントの安定性や寿命に深く関わってきます。
これらのリスクを正しく理解し、適切な対策を講じることが、インプラントを長期間にわたって快適に使い続けるための鍵となります。
リスク1:インプラント周囲炎
インプラントの長期的な成功を脅かす最大のリスクが「インプラント周囲炎」です。これは、インプラントの周囲の歯茎や、インプラントを支える顎の骨が、歯周病菌によって炎症を起こす病気で、「インプラント版の歯周病」とも呼ばれています。
インプラント周囲炎の主な原因は、天然歯の歯周病と同様にプラーク(歯垢)の蓄積です。歯磨きが不十分で、インプラントと歯茎の境目などに細菌が繁殖すると、炎症が始まり、放置すると骨が破壊されて最終的にはインプラントが抜け落ちてしまうこともあります。
このインプラント周囲炎のリスクを理解し、その予防と早期発見に努めることが、インプラントを長持ちさせる上で最も重要なポイントとなります。
歯周病との違いと進行の速さ
インプラント周囲炎は天然歯の歯周病と似ていますが、その進行には決定的な違いがあります。最も重要なのは、インプラントには天然歯が持つ「歯根膜(しこんまく)」という組織が存在しない点です。歯根膜は、歯と骨の間にあってクッションのような役割を果たすだけでなく、細菌感染から骨を守る防御機能も持っています。
この歯根膜がないため、インプラントは細菌に対する防御機能が弱く、一度炎症が起こると、自覚症状が少ないまま非常に速いスピードで顎の骨にまで炎症が広がりやすいという特徴があります。天然歯の歯周病よりも短期間で重症化しやすく、気づいた時にはインプラントを支える骨が大きく失われているケースも少なくありません。この急速な進行こそが、インプラント周囲炎の最大の危険性であり、定期的な専門家のチェックが不可欠である理由でもあります。
インプラント周囲炎の主な症状
インプラント周囲炎は、初期段階では自覚症状がほとんどないことが多いですが、進行するといくつかのサインが現れます。これらの症状を見逃さずに早期に気づくことが、重症化を防ぐ上で非常に重要です。
初期症状としては、「歯磨きの際にインプラント周りの歯茎から出血がある」「歯茎が赤く腫れている」といった変化が挙げられます。痛みを感じることは少ないため、ご自身で鏡を見て確認したり、歯磨きの際に注意深く観察したりすることが大切です。
さらに進行すると、「歯茎から膿が出る」「インプラントが少しぐらつくように感じる」「口臭が強くなる」といった症状が現れることがあります。これらのサインが見られた場合は、すでに炎症がかなり進行している可能性が高いため、できるだけ早く歯科医院を受診してください。早期に発見し、適切な治療を開始することで、インプラントを守れる可能性が高まります。
リスク2:周りの天然歯が虫歯や歯周病になる
インプラントそのものは虫歯になりませんが、口腔内の衛生状態が悪ければ、残っているご自身の天然歯が虫歯や歯周病になるリスクは依然として存在します。インプラント治療は失った歯を補うものですが、口腔全体の健康を維持する意識がなければ、インプラント以外の歯がトラブルを起こしてしまう可能性があります。
特に、インプラントと隣接する天然歯の境目や、インプラント周囲の歯茎の溝は、プラークが溜まりやすく、注意深いブラッシングが必要です。ここを磨き残してしまうと、隣の天然歯が虫歯になったり、歯周病が進行したりする原因となります。
インプラントを長持ちさせるためには、インプラント単体だけでなく、口腔内全体の健康を維持することが不可欠です。インプラント治療後も、残された天然歯の虫歯予防や歯周病ケアを継続して行い、口内全体の環境を良好に保つことが、結果としてインプラントの安定性にもつながります。
リスク3:インプラント本体の破損・脱落
インプラントは非常に丈夫な素材でできていますが、強い衝撃や過度な力が加わることで、破損や脱落といった物理的なトラブルが起こる可能性もゼロではありません。特にインプラントの「上部構造」、つまり人工歯の部分はセラミックやジルコニアといった歯科用素材でできており、非常に硬いものを噛んだり、転倒などで強い衝撃が加わったりすると、欠けたり割れたりすることがあります。
また、就寝中の歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は、インプラントに継続的に大きな負担がかかるため、上部構造の破損だけでなく、インプラントを骨に固定しているネジが緩むといった問題が生じることもあります。歯科医院でナイトガード(マウスピース)を製作してもらうなど、適切な対応が必要です。
さらに深刻なケースとしては、インプラント周囲炎が重度に進行し、インプラントを支えている顎の骨が広範囲にわたって破壊されてしまうと、最終的にインプラントが固定力を失って抜け落ちてしまうことがあります。このような事態を避けるためにも、日頃からの丁寧なケアと、定期的な歯科医院でのチェックを通じてインプラント周囲炎を予防することが極めて重要となります。
リスク4:噛み合わせの不具合や顎への負担
インプラントは、天然歯にはない「歯根膜」というクッションのような組織がないため、噛み合わせの力が顎の骨にダイレクトに伝わります。そのため、インプラント治療後の噛み合わせの調整が不十分であったり、時間が経過するにつれて周囲の天然歯が移動して噛み合わせが変わったりすると、インプラントや顎の関節に過度な負担がかかるリスクがあります。
噛み合わせのバランスが崩れると、特定のインプラントや天然歯に集中して強い力がかかり、インプラントの破損や周囲の骨への負担を増大させ、インプラント周囲炎のリスクを高めることにもつながります。また、顎関節に継続的な負担がかかることで、顎関節症を引き起こし、痛みや開口障害などの不調を招く可能性も考えられます。
このような事態を防ぐためには、インプラント装着後の定期的な噛み合わせのチェックと調整が非常に重要です。歯科医師が噛み合わせの変化を早期に発見し、適切な調整を行うことで、インプラントと顎の健康を長期的に維持することができます。
インプラントの寿命はどのくらい?長持ちさせる秘訣はメンテナンス
インプラント治療は、失った歯の機能と見た目を回復させる有効な手段ですが、高額な治療費がかかるため、「どれくらい長持ちするのか」という点は多くの方が最も関心を持たれることでしょう。インプラントの寿命は、一概に「〇年」と断言できるものではなく、治療後のご自身のケアと歯科医院での専門的なメンテナンスによって大きく変わります。
適切なメンテナンスを続けることで、インプラントは長期間にわたりお口の中で機能し、食事や会話を快適に楽しむことができます。このセクションでは、インプラントの一般的な寿命の目安と、それを最大限に延ばすために不可欠なメンテナンスの重要性について詳しく解説していきます。
インプラントの平均寿命と実態
インプラントの平均寿命は、多くの研究データによってその耐久性が示されています。一般的に、インプラントの10年後の残存率は90%以上と非常に高く、中には15年、20年以上問題なく機能しているケースも少なくありません。これは、天然の歯と比べても遜色ない、あるいはそれ以上の耐久性を持つことを意味します。
しかし、この「平均寿命」という数字は、あくまで統計的なデータであり、すべての方に当てはまるわけではありません。重要なのは、インプラントを「どれだけ長く維持できるか」という個人の努力と環境です。適切なセルフケアと定期的なプロフェッショナルケアを継続することで、平均寿命をはるかに超えて、半永久的にインプラントを使い続けることも夢ではありません。インプラントは、適切な管理をすれば長期にわたる資産価値となるため、その維持には前向きな姿勢が不可欠です。
なぜ定期的なメンテナンスが不可欠なのか?
インプラントを長く快適に使い続けるためには、歯科医院での定期的なメンテナンスが「不可欠」です。ご自宅でのセルフケアも非常に重要ですが、それだけでは防ぎきれないリスクが存在するため、専門家によるチェックとクリーニングが必要となります。
まず、ご自身の歯磨きだけでは除去しきれない、強力な細菌の塊である「バイオフィルム」や「歯石」を専門的な器具で徹底的に清掃することができます。これらの汚れはインプラント周囲炎の最大の原因となるため、定期的な除去が予防には欠かせません。次に、インプラント周囲炎の初期症状や、その他のトラブルは、ご自身では気づきにくいことがほとんどです。歯科医師や歯科衛生士は、歯茎のわずかな変化やインプラントの異常を早期に発見し、進行する前に適切な処置を行うことができます。最後に、噛み合わせは時間とともに変化することがあり、インプラントに過度な負担がかかると、破損や顎関節のトラブルにつながる可能性があります。定期検診では噛み合わせのバランスをチェックし、必要に応じて調整することで、インプラントと周囲の組織への負担を最小限に抑え、長持ちさせることにつながるのです。
インプラントの寿命を延ばす!今日からできる正しい手入れ方法
インプラントは、失った歯の機能と見た目を回復させる素晴らしい治療法ですが、その最大のメリットを享受し、長期にわたって快適に使い続けるためには、日々の手入れが非常に重要です。このセクションでは、インプラントを長持ちさせるために具体的に何をすれば良いのか、その実践的な方法を解説します。
ご自宅で行うセルフケアと、歯科医院で専門家が行うプロフェッショナルケアは、インプラントを一生涯使い続けるための両輪となります。それぞれの具体的な方法を知り、今日から実践することで、「インプラントにして本当に良かった」と実感できるよう、一緒に学びを深めていきましょう。
【自宅でできる】毎日のセルフケア
インプラントを長期的に維持するためには、毎日の丁寧なセルフケアが何よりも重要です。インプラント自体は虫歯になりませんが、インプラント周囲炎という歯周病に似た病気のリスクは常に存在します。
インプラント特有の構造を理解し、それに合わせた適切なケアを行うことで、プラーク(歯垢)の蓄積を防ぎ、炎症の発生を未然に防ぐことができます。この後の項目でご紹介する基本的な歯磨きの方法や、歯間ブラシ、ワンタフトブラシなどの補助ツールの正しい使い方を習得し、ご自身のインプラントを守っていきましょう。
基本的な歯磨きの方法と歯ブラシの選び方
インプラント治療後の歯磨きでは、歯茎を傷つけずにプラークを効率的に除去することが大切です。歯ブラシは、毛先が柔らかめのものを選ぶと良いでしょう。硬すぎる歯ブラシや強い力でのブラッシングは、歯茎を傷つけ、炎症を引き起こす原因になることがあります。
磨き方としては、インプラントと歯茎の境目に歯ブラシの毛先を45度の角度で当て、小刻みに優しく動かす「バス法」などが効果的です。特に、インプラントの周りは汚れがたまりやすいので、一本ずつ丁寧に磨く意識が重要です。力を入れすぎず、毛先が歯周ポケットに届くように意識しながら、プラークを丁寧に掻き出してください。
歯間ブラシ・デンタルフロスの活用法
歯ブラシだけでは、インプラントと隣の歯の間や、インプラントの上部構造の根元部分に溜まった汚れを完全に除去することは困難です。これらの部位の清掃には、歯間ブラシやデンタルフロスの活用が不可欠です。
歯間ブラシは、インプラントの隙間の大きさに合ったサイズを選ぶことが重要です。無理に挿入せず、スムーズに入るサイズのものを使いましょう。デンタルフロスには、インプラント専用のものが市販されており、より効率的に汚れを除去できます。インプラントの形態は患者さん一人ひとり異なるため、ご自身に最適なツールと正しい使い方は、歯科医師や歯科衛生士に指導してもらうのが最も効果的です。定期検診の際に相談し、適切な指導を受けましょう。
ワンタフトブラシなど補助ツールの使い方
さらに高い清掃効果を目指す方には、ワンタフトブラシなどの補助的な清掃用具の活用をおすすめします。ワンタフトブラシは、毛束が一つにまとまっているため、インプラントの根元や、ブリッジタイプの上部構造の隙間、奥歯の複雑な形状の部分など、通常の歯ブラシでは届きにくい箇所をピンポイントで磨くのに非常に有効です。
また、ジェット水流で汚れを洗い流す口腔洗浄器(ウォーターピックなど)も、歯周ポケット内の洗浄や、矯正装置周辺の清掃に役立ちます。これらの補助ツールを日々のケアに取り入れることで、セルフケアの質をさらに高め、インプラント周囲炎のリスクを低減することができます。
【歯科医院で行う】プロフェッショナルケア
毎日のセルフケアがインプラントの長期維持に不可欠であることは間違いありませんが、ご自宅でのケアだけでは限界があります。セルフケアでは除去しきれない頑固なプラークや歯石、そしてインプラント周囲炎の初期サインなどは、専門家によるプロフェッショナルケアによって初めて管理が可能になります。
歯科医院での定期的なメンテナンスは、セルフケアを強力に補完し、インプラントの長期的な安定を保証するための重要な柱です。専門家によるチェックとクリーニングがなぜ必要なのかを理解し、この後の項目でご紹介する具体的なメンテナンス内容を知ることで、プロフェッショナルケアの価値を最大限に活用できるようになります。
定期メンテナンスで行うこと(クリーニング、噛み合わせチェックなど)
歯科医院で行われる定期メンテナンスでは、インプラントを長持ちさせるための多角的なアプローチが行われます。具体的には、以下のような内容が含まれます。
インプラント周囲のプラークや歯石の除去:ご自身では取り除きにくいバイオフィルムや歯石を、専門的な器具を用いて徹底的にクリーニングします。
歯茎の状態のチェック:歯茎の出血、腫れ、歯周ポケットの深さなどを測定し、インプラント周囲炎の兆候がないか確認します。
インプラント本体の動揺度(ぐらつき)の確認:インプラントが顎の骨にしっかりと結合しているか、動揺がないかを確認します。
上部構造の破損やネジの緩みのチェック:人工歯の欠けや割れ、インプラントを固定するネジの緩みなどがないかを検査します。
噛み合わせの確認と調整:噛み合わせは時間とともに変化することがあるため、インプラントや顎への負担が偏っていないかを確認し、必要に応じて調整を行います。
レントゲン撮影による骨の状態の確認:インプラント周囲の骨が吸収されていないか、骨の状態に異常がないかを詳細に調べます。
セルフケア方法の再指導:患者さんの口腔内の状態に合わせて、より効果的なセルフケアの方法を改めて指導します。
これらの専門的なケアを通じて、インプラント周囲炎などのトラブルを早期に発見し、対処することができます。
メンテナンスの適切な頻度の目安
インプラントの定期メンテナンスを受ける頻度は、一般的に「3ヶ月〜6ヶ月に1回」が推奨されることが多いです。しかし、この頻度は患者さんの口腔内の状態、毎日のセルフケアのレベル、喫煙習慣の有無、インプラントの本数や位置、全身の健康状態など、さまざまな要因によって異なります。
そのため、一律にこの頻度を守れば良いというわけではなく、担当の歯科医師が個別のリスク評価に基づき、最適なメンテナンス計画を立案します。例えば、口腔内の衛生状態があまり良くない方や、喫煙習慣がある方は、より短い間隔でのメンテナンスが必要になる場合もあります。ご自身の状況に合わせて、歯科医師と相談しながら適切な頻度を決定することが、インプラントを長持ちさせる上で非常に重要です。
インプラントと虫歯に関するよくある質問
インプラントは人工歯でありながら、天然歯のような機能と見た目を回復できる優れた治療法です。しかし、高額な治療であるからこそ、治療を受ける前には多くの疑問や不安がつきまとうものです。ここでは、これまで解説してきた内容を踏まえつつ、インプラント治療に関してよく寄せられる質問についてQ&A形式で解説します。インプラント治療を検討されている方が抱きがちな疑問を解消し、より安心して治療に臨めるよう、具体的な情報を提供いたします。
インプラント治療前に虫歯が見つかったらどうする?
インプラント治療を検討されている方で、治療前の検査で虫歯や歯周病が見つかることは少なくありません。「先にインプラント治療を進めたい」と思われるかもしれませんが、結論として、インプラント治療を開始する前に、見つかった虫歯や歯周病は必ず治療を完了させる必要があります。
その理由は、口腔内に虫歯や歯周病といった感染源がある状態でインプラント手術を行うと、インプラントの周囲に細菌が感染し、手術の成功率が著しく低下してしまうためです。また、手術が成功したとしても、感染が原因でインプラント周囲炎を発症しやすくなるなど、長期的な安定に悪影響を及ぼすリスクが高まります。安全で成功率の高いインプラント治療のためには、まず口腔内を清潔で健康な状態に整える「土台作り」が非常に重要となるのです。
インプラント治療に保険は適用されますか?
インプラント治療は、残念ながら原則として公的医療保険が適用されない自費診療となります。これは、インプラント治療が、失われた歯の機能を回復させるだけでなく、審美性も重視される「高度な医療技術を用いた治療」と位置づけられているためです。
しかし、ごく限定的なケースでは保険が適用されることもあります。例えば、生まれつき歯がほとんどない先天性疾患の場合や、事故によって顎の骨を広範囲に失い、他の治療法では対応が難しいと判断された場合などです。これらのケースでも、特定の施設基準を満たした医療機関での治療であることや、大学病院などで治療を受ける必要があるなど、厳しい条件が設けられています。ほとんどの一般的なインプラント治療は自己負担となりますが、年間で支払った医療費が一定額を超える場合には、医療費控除の対象となる可能性がありますので、確定申告の際に確認してみると良いでしょう。
インプラント周囲炎になってしまったら治療できますか?
インプラント周囲炎は、インプラントを長持ちさせる上で最大の脅威となる病気ですが、「もしなってしまったらもう手遅れなのか」と不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。ご安心ください、インプラント周囲炎は治療が可能です。しかし、その治療法や治療の難易度は、病気の進行度合いによって大きく異なります。
初期段階のインプラント周囲炎であれば、徹底した専門的なクリーニングや、毎日のセルフケア方法を見直すことで、炎症の進行を食い止め、回復に向かわせることが期待できます。しかし、炎症が進行して周囲の骨が溶け始めてしまっている場合は、歯茎を切開する外科手術や、特殊な器具を用いたインプラント表面の洗浄、場合によっては溶けてしまった骨を再生させる治療が必要になることもあります。このように、進行すればするほど治療は複雑になり、時間も費用もかかりますので、何よりも早期発見・早期治療、そして日頃からの予防が最も重要であることを忘れないでください。定期的な検診とプロフェッショナルケアを欠かさず受けることが、インプラントを長期間安定して使い続けるための鍵となります。
まとめ:インプラントは虫歯にならないが、一生使うためにはケアが不可欠
インプラントは、虫歯になることはありません。これは、インプラントがチタンやセラミックといった人工素材でできているため、虫歯菌が作り出す酸によって溶かされる天然歯とは根本的に構造が異なるからです。この点は、インプラントの大きなメリットの一つであり、多くの方が治療を検討する理由でもあります。
しかし、虫歯にならないからといって「インプラントはメンテナンスフリー」というわけではありません。むしろ、インプラントを長期間、快適に使い続けるためには、虫歯よりも深刻な「インプラント周囲炎」の予防が何よりも重要になります。インプラント周囲炎は、天然歯の歯周病と異なり、自覚症状が少ないまま急速に進行し、最終的にはインプラントの脱落を招く恐れがあるからです。
このインプラント周囲炎を防ぎ、インプラントの価値を最大限に引き出すためには、ご自身で行う毎日の丁寧なセルフケアと、歯科医院で定期的に受けるプロフェッショナルケアの両輪が不可欠です。適切なケアを続けることで、インプラントは失った歯の機能と見た目を取り戻し、食事や会話を心から楽しめるようになるなど、あなたの生活の質を大きく向上させる素晴らしい治療法となるでしょう。ぜひ、歯科医師や歯科衛生士と協力しながら、ご自身のインプラントを大切に守ってください。
監修者
神奈川歯科大学卒業後、中沢歯科医院 訪問歯科治療担当
医療法人社団葵実会青葉歯科医院 分院長就任
シンタニ銀座歯科口腔外科クリニック 親知らず口腔外科担当
医療法人社団和晃会クリーン歯科 分院長就任
医療法人社団横浜駅前歯科矯正歯科 矯正口腔外科担当
医療法人社団希翔会日比谷通りスクエア歯科
おおもり北口歯科 開業
昭和大学口腔外科退局後は、昭和大学歯学部学生口腔外科実習指導担当経験 また、都内、神奈川県内の各歯科医院にて出張手術担当。
【所属】
・日本口腔外科学会
・ICOI国際インプラント学会
・日本口腔インプラント学会
・顎顔面インプラント学会
・顎咬合学会
・スポーツ歯科学会
・アメリカ心臓協会AHA
・スタディーグループFTP主宰
【略歴】
・神奈川歯科大学 卒業
・中沢歯科医院 訪問歯科治療担当
・医療法人社団葵実会青葉歯科医院 分院長就任
・シンタニ銀座歯科口腔外科クリニック 親知らず口腔外科担当
・医療法人社団和晃会クリーン歯科 分院長就任
・医療法人社団横浜駅前歯科矯正歯科 矯正口腔外科担当
・医療法人社団希翔会日比谷通りスクエア歯科



